近年、キッチンカーは低コストかつ小規模で始められる移動販売ビジネスとして注目を集めています。しかし、キッチンカーで食品を提供するには、いくつかの資格や行政手続きが必要です。この記事では、営業に必要な資格の概要と取得手順、開業時に注意すべきポイントについて詳しく解説します。

キッチンカー営業に必要な資格とは

キッチンカーを運営するには、保健所からの営業許可と、食品衛生管理に関する資格が必要です。これらは、営業開始前に必ず準備しておくべき法的要件です。

食品衛生責任者の資格が必須

飲食物を取り扱う営業では、原則として「食品衛生責任者」の設置が義務づけられています。調理師、栄養士などの国家資格を保有していない場合でも、各都道府県の食品衛生協会が実施する講習を1日受講するだけで取得可能です。講習修了後は即日修了証が交付され、キッチンカー営業に必要な要件を1つ満たすことができます。

営業許可証の取得も必要

キッチンカーで食品を販売するには、出店予定地域を管轄する保健所から「飲食店営業許可」を取得する必要があります。これは車両内の設備や衛生管理体制を審査され、一定の基準を満たした場合に発行されるものです。審査には、車内のレイアウト図や給排水設備の仕様などが含まれます。

地域によって異なる追加資格や手続き

都道府県によって営業許可の基準や必要設備が異なる場合があります。たとえば、東京都では2槽シンクが必要な一方で、他の地域では1槽で認められることもあります。また、営業可能エリアや営業形態に関する規定も異なるため、必ず事前に出店予定地域の保健所で確認することが重要です。

資格を取得するまでの流れ

必要な資格や許可は短期間で取得可能ですが、申請書類の準備や設備の改造にはある程度の時間と費用がかかります。

食品衛生責任者講習の受講方法と費用

各都道府県の食品衛生協会が定期的に開催している講習会に申し込みます。講習時間は通常6時間程度で、座学中心のカリキュラムとなっています。費用は地域によって異なりますが、おおむね1万円前後です。予約が埋まりやすいため、早めの申し込みが推奨されます。

営業許可証の申請先と必要書類

営業許可は、出店地域の保健所に対して申請します。必要な書類としては、以下のものが一般的です。

  • 営業許可申請書
  • 車両の設備配置図
  • 給水・排水タンクの容量がわかる資料
  • 食品衛生責任者の修了証の写し
  • 使用予定の食材や調理方法の説明書

申請から許可取得までには、通常1〜2週間程度かかります。

保健所検査・設備基準のポイント

保健所の現地検査では、営業車の設備が衛生基準に適合しているか確認されます。たとえば、清潔な調理スペース、シンクの数と大きさ、給排水タンクの容量、冷蔵庫や手洗い設備の有無などがチェックされます。不備がある場合は、改善後に再検査となるため、初回で合格できるよう事前に基準を確認しておきましょう。

資格以外で必要になる準備

資格と許可を取得しても、すぐに営業を始められるわけではありません。法的手続きや設備投資も重要です。

キッチンカー車両の仕様と改造

営業許可を受けるには、食品の調理と提供が衛生的に行えるよう改造された車両が必要です。多くの事業者は中古の軽バンやワゴン車をベースに、業者に依頼して調理台や換気扇、冷蔵庫などを設置します。改造費用は規模にもよりますが、50万円から150万円程度が目安です。

開業届や青色申告の届け出

キッチンカー事業を個人で始める場合は、税務署へ「個人事業の開業届出書」と「青色申告承認申請書」を提出することで、事業主として正式に登録されます。青色申告を選択すれば、一定の条件を満たすことで65万円の控除を受けることも可能です。

PL保険や各種保険の加入検討

食品を提供する事業には、万が一の食中毒や事故に備えた「生産物賠償責任保険(PL保険)」への加入が推奨されます。出店先によっては加入が義務づけられている場合もあります。あわせて、車両保険や労災保険などの整備も検討しましょう。

よくある質問と注意点

個人と法人、どちらで開業すべき?

キッチンカーの多くは個人事業主として始められますが、複数台の運用や雇用を考えている場合は法人化を検討する価値があります。法人にすることで、社会的信用や融資面で有利になる可能性もあります。

複数地域で営業するにはどうすればいい?

原則として、出店するすべての地域で営業許可を取得する必要があります。ただし、都道府県によっては「広域営業許可制度」などの特例が設けられていることもあり、複数地域での出店を視野に入れる場合は制度の有無を確認しておくとよいでしょう。

資格なしで営業するとどうなる?

食品衛生責任者の設置や営業許可を取得せずに営業を行った場合、食品衛生法違反となり、営業停止や罰金といった行政処分が下される可能性があります。また、事故が発生した場合に保険の適用が受けられないこともあるため、必ず事前に手続きを完了させましょう。

まとめ

キッチンカー営業には、「食品衛生責任者資格」と「飲食店営業許可」の取得が必須です。また、車両の設備基準を満たすための改造や、税務・保険手続きなど、事前に整えておくべき事項は多岐にわたります。地域ごとのルールも異なるため、営業を希望する場所の保健所に事前相談することが重要です。

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